3.損金の額の計算

2019年10月31日 現在

3-1 棚卸資産

(1)評価方法

・評価方法を選定する場合 
       事業の種類ごとに、かつ、棚卸資産の区分ごとに選定しなければならない。
選定できる評価方法として、原価法(個別法、先入先出法など)や低価法がある。
・評価方法を選定しない場合
  最終仕入原価法(法定評価方法

 ※ 平成23年度改正より、切放し低価法が廃止された。

(2)取得価額

・購入      購入代価+消費又は販売の用に供するために直接要した費用
・自社製造   原材料費+労務費+経費+消費又は販売の用に供するために直接要した費用
 ※ 少額な付随費用は、取得価額に算入しないことができる。

3-2 減価償却

(1)減価償却資産

・ 建物及びその附属設備
・ 構築物
・ 機械及び装置
・ 船舶
・ 航空機
・ 車両及び運搬具
・ 工具、器具及び備品
・ 無形固定資産(ソフトウェア、営業権など)
・ 生物

※ 事業の用に供していないもの及び時の経過により価値の減少しないものを除く。
※ 平成26年12月19日改正
  取得価額1点100万円未満の絵画等は減価償却資産として扱う。

(2)減価償却の計算

1.償却方法
・償却方法を選定する場合  
 資産の種類や事務所ごとに選定できる
 
・償却方法を選定しない場合 (法定償却方法)  
 建物  定額法
 建物付属設備、構築物 (※)  定額法
 機械装置、車両運搬具、工器具備品  定率法
 無形固定資産(ソフトウェア、営業権など)  定額法

 ※ 平成28年4月1日以後取得分は定額法(従前は定率法)

 

2.取得価額
・購入     購入代価+事業の用に供するために直接要した費用の額
・自社製造   原材料費+労務費+経費+事業の用に供するために直接要した費用の額
3.耐用年数、償却率

 耐用年数表参照 
 ※営業権償却(耐用年数5年)
    平成29年4月1日以後取得分は月割償却(従前は均等償却)

 

4 .残存価額・償却可能限度額

◎ 平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産

  残存価額 償却可能限度額
有形固定資産 取得価額×10% 取得価額×95%
無形固定資産 ゼロ 取得価額

・ 償却可能限度額まで償却した翌事業年度以後5年間で1円まで均等償却できる。

 ◎ 平成19年4月1日から平成24年3月31日までの間に取得した減価償却資産

・ 償却可能限度額 及び 残存価額の廃止

・ 耐用年数経過時点に1円まで償却できる

・ 250%定率法

◆ 250%定率法
   定率法を採用する場合に、定額法の償却率×2.5の償却率により計算する方法。
 特定事業年度以後は残存年数による均等償却に切り替えて1円まで償却する。

 ◎ 平成24年4月1日以後に取得した減価償却資産

・ 200%定率法

(3)少額減価償却資産

1.原則
使用可能期間 1年未満(※1) 損金経理により損金算入できる
取得価額(※2) 10万円未満 損金経理により損金算入できる
取得価額(※2 20万円未満 一括して3年間で損金経理により損金算入できる

     ※1 放映1年未満のコマーシャルフィルムなど
     ※2 通常1単位として取引される単位で判定
     例:イス、テーブルは通常1個ずつ、応接セットはイスとテーブルのセットで判定
  ※1 ※2 貸付けの用に供したものを除く

 

2.青色申告法人である中小企業者等の特例

  取得価額30万円未満の減価償却資産は、損金経理により損金算入できる。
  ※ 取得価額の合計額が300万円までに達するまで
  ※ 貸付けの用に供したものを除く
       ※ 令和6年3月31日までに事業の用に供する

 

 

(4)資本的支出と修繕費

1.資本的支出

 固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなる金額
  ・ 建物の避難階段の取付費用
  ・ 用途変更のための模様替えなどの改装費用
  ・ 高性能部品への取替費用で通常を超える部分の金額 

2.修繕費

 固定資産の通常の維持管理又は原状回復するために要する金額 

3.少額又は周期の短い費用の場合

 次のいずれかの場合は、内容にかかわらず修繕費として損金経理できる。
   ・ 20万円未満
   ・ 3年以内の周期 

4.資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでない場合

 次のいずれかの場合は、修繕費として損金経理できる。
   ・ 60万円未満
   ・ 前期末の取得価額のおおむね10%以下

(5)中古資産の耐用年数

原則は法定耐用年数だが、見積耐用年数又は下記の算式によることができる。

法定耐用年数の全部が経過したもの   法定耐用年数×20%
法定耐用年数の一部が経過したもの (法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%
      ※1年未満の端数は切捨、2年未満は2年

3-3 繰延資産

(1)繰延資産

法人が支出する費用のうち支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶものをいい、会計上の繰延資産と税法特有の繰延資産からなる。
※ 資産の取得に要した金額とされるべき費用及び前払費用を除く。

(2)損金算入額

損金経理額のうち、償却限度額に達するまでの金額とする。
※ 支出金額が20万円未満の繰延資産は、損金経理により全額損金算入できる。

(3)償却限度額

・会計上の繰延資産  繰延資産の額-既償却額
・その他の繰延資産  繰延資産の額×(その事業年度の月数/償却期間の月数)

(4)会計上の繰延資産

・株式交付費
・社債等発行費
・創立費
・開業費
・開発費

(5)その他の繰延資産の償却期間

・商店街のアーケード等   原則5年
・建物を賃借するたもの権利金   5年又は賃借期間 (短い年数)
・ノウハウの頭金   原則5年
・広告宣伝用資産の贈与     5年又は耐用年数×70% (短い年数)
・同業者団体の加入金   5年

3-4 給与

(1)法人税法上の役員  

1.通常の役員

取締役、監査役、清算人など

2.法人の使用人以外の者で経営に従事しているもの

相談役、顧問など

3.みなし役員

同族会社の使用人でいずれの条件を満たすもの
 ・経営に従事している
 ・持株要件の全て満たす

◆持株要件  
  50%基準  順位加算で50%超になる第3順位までの株主グループに所属
  10%基準  10%超の株主グループに所属
   5%基準  自分と配偶者等が5%超所有

 

(2)使用人兼務役員  

役員のうち、使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事するもの  
ただし下記のものは、使用人兼務役員となれない。  
 1.代表取締役、専務取締役、常務取締役、監査役など
 2.同族会社の役員のうち、上記の持株要件を全て満たすもの

 

(3)特殊関係使用人  

役員の親族である使用人など 

    

(4)役員給与の損金不算入

役員に対して支給する給与のうち、下記以外は損金不算入  

 1.定期同額給与
 2.事前確定届出給与
 3.非同族会社の利益連動給与
 4.退職給与
 5.使用人兼務役員の使用人分給与
   
上記 1~5でも、不相当に高額な部分の金額や事実隠ぺい、仮装経理によるものは損金不算入    

  ◆ 定期同額給与に該当するもの
    ・3ヶ月経過日等までにされた定期給与の改定
     ただし、定期給与の増額改定に伴う一括支給は損金不算入
    ・臨時改定事由(役員の職制上の地位の変更)によりされた定期給与の改定
    ・業績悪化改定事由によりされた定期給与の改定

  ※ 平成29年4月以降(令69条2)
      定期給与の支給額から源泉所得税、地方税、社会保険料を控除した手取額が
          同額である場合は定期同額給与とみなす

(5)過大な使用人給与の損金不算入

特殊関係使用人に対して支給する給与のうち、不相当に高額な金額は損金不算入

 

(6)使用人賞与の損金算入時期  

使用人賞与は、原則支給日に損金算入される。 ただし下記1.2の場合は一定要件により未払計上による損金算入も可。

1. 就業規則等に定められた支給予定日が決算日前である賞与

2. 決算日後1ヶ月以内に支給した賞与

3-5 寄附金

(1)寄附金

寄附金の額は、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わず、金銭その他の資産、経済的利益の贈与又は無償の供与をした場合の時価相当額をいう。低額譲渡による対価と時価との差額なども寄附金の額に含まれる。

(2)損金不算入

原 則      寄附金の額の合計額のうち、損金算入限度額を超える部分の金額は、損金不算入。
例 外   国、地方公共団体への寄附金や指定寄附金は、全額損金算入。
    特定公益増進法人と認定NPO法人などへの寄附金は、
損金算入限度額(一般の寄附金とは別枠)内で損金算入。

(3)損金算入限度額

一般の寄付金
  次の合計額の1/4
・資本金等の額   ×(2.5/1000)
・所得金額          ×(2.5/100)
特定公益増進法人等に対する寄付金
  次の合計額の1/2
・資本金等の額   ×(3.75/1000)
・所得の金額    ×(6.25/100)

(4)その他

1. 寄附金に該当しない場合 
  ・子会社等を整理する場合で、相当な理由により損失負担等をした場合 
2.個人の負担すべき寄附金 
  ・役員等が個人として負担すべきものは、その者に対する給与とする。

3-6 租税公課

(1)損金不算入の租税公課

  • 法人税等、道府県民税等、延滞税、過小申告加算税、重加算税、過怠税、罰金等  

(2)損金算入時期

・申告納税方式(事業税等) 納税申告書が提出された日 

 ※ 修正申告の場合は、前事業年度の事業税を損金算入できる

・賦課決定方式(固定資産税等) 原則     賦課決定のあった日
  例外     納付開始の日又は実際に納付した日

 

(3)役員又は使用人に対する罰科金等

・ 業務遂行に関連するものは、損金不算入
・ その他のものは、給与

  

3-7 有価証券

(1)取得価額

・購入  : 購入代価
・金銭の払込による取得  : 払込金額
・有利な発行価額による取得  : 払込期日の価額

 

(2)税務上の有価証券と期末評価

・売買目的有価証券(勘定科目で区分)  : 時価法
・満期保有目的等有価証券  : 償還原価法
・その他の有価証券  : 原価法

 ※ 譲渡原価は、上記区分ごとに移動平均法又は総平均法により算出した

   一単位当たりの簿価 (1円未満切上) に譲渡株数を乗じて計算する。

(3)評価損が計上できる場合

  下記の事実により、有価証券の価額がその帳簿価額を下回ることとなった場合

 ・上場有価証券の価額が著しく低下した場合

 ・非上場有価証券について、その発行法人の資産状態が著しく悪化したため、

  その価額が著しく低下した場合

  ・上記に準ずる特別な事実があった場合

 

(4)譲渡損益の計上時期

  • 原則として約定日

3-8 交際費等

(1)交際費等

交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいう。

 

(2)交際費等から除かれるもの

福利厚生費 :  慰安旅行費や社内規により従業員等へ支給される祝金、香典など
広告宣伝費 カレンダーの贈与など不特定多数の者に対する宣伝的効果を意図するもの
会 議 費 会議に関連する飲食代
※社外の者との飲食で、1人当たり10,000円以下のものは全額会議費
寄 附 金  社会事業団体、政治団体、神社への寄付など
給  与 従業員に対して支給されるもので、毎日の昼食代など本来その者が負担するもの

 

(3)損金不算入

法人が支出する一定の交際費等の額は、損金の額に算入しない。

 

(4)損金不算入額

期末資本金1億円以下の法人
下記のいずれか選択適用
・ 年800万円(定額控除限度額)を超える金額
・ 接待飲食費の50%相当額を超える金額

 

(5)その他

1.費途不明金

法人が交際費等の名義をもつて支出した金銭でその費途が明らかでないものは、損金不算入とする。

 

2 .ゴルフクラブの入会金、年会費等

・ 法人会員   入会金は資産計上、年会費等は交際費等 
・ 個人会員   入会金、年会費等ともに給与 

3-9 保険料

(1)養老保険

 受取人 取扱い
 死亡保険金  生存保険金
法人 法人  資産計上
遺族 遺族  給与
遺族 法人  1/2を資産計上
 1/2を損金算入(※)

  ※ 役員又は特定の使用人のみを被保険者としている場合は給与

 

(2)定期保険

受取人 取扱い
死亡保険金
法人  損金算入
遺族  損金算入( 2)

  ※ 役員又は特定の使用人のみを被保険者としている場合は、給与

 

(3)労働保険

・ 事業主負担分
 概算保険料        申告日又は納付日に損金算入 
 確定保険料   納付の場合  申告日又は納付日に損金算入 (未払金計上も可)
   還付の場合    申告日に益金算入
・ 被保険者負担分
概算保険料  立替金等
確定保険料  立替金等の精算

3-10 貸倒損失

(1)法律上の貸倒れ

 下記の場合には、次の金額を貸倒れとして損金算入する。

民事再生法等の法律の規定による決定があった場合
  その決定により切り捨てられた金額
債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、弁済を受けられないと認められる場合
  書面により明らかにされた債務免除額

(2)事実上の貸倒れ

 債務者の資産状況、支払能力等から債権全額が回収できないことが明らかになった場合には、貸倒れとして損金経理をすることができる。

 

(3)形式上の貸倒れ

 下記の場合には、債務者に対する売掛金等の額から備忘価額を控除した残額を貸倒れとして損金経理することを認める。

  ・債務者との取引を停止した時以後1年以上経過した場合

  ・同一地域の債務者の売掛金等の総額が取立旅費等に満たない場合で、督促したにもかかわらず弁済がないとき

3-11 海外渡航費

(1)原則

・業務遂行上必要な相当額     旅費として損金算入
・上記以外   役員又は使用人に対する給与

(2)業務と観光とを併せて行った場合

業務と観光の期間との比等によりあん分し、(1)の取扱いを適用する。
ただし、海外渡航の直接の動機が業務遂行のためで、併せて観光を行う場合には、往復旅費は業務遂行上必要と認められる。 

(3)慰安旅行(海外を含む)を行った場合

次のいずれの要件も満たす場合には、原則として給与課税しなくて差し支えない。

 ・旅行期間が4泊5日以内

 ・旅行に参加する従業員の数が全体の50%以上