1.給与所得の源泉徴収の仕方

2018年4月1日 現在

1―1 月々(日々)の源泉徴収事務の流れ

(1) 控除対象配偶者、扶養親族などの確認
(2) 給与や賞与に対する源泉徴収税額の計算と記録
(3) 源泉徴収税額の納付

1-2  給与所得の範囲

課税    役員報酬・給与・賞与
      役員・社員に対する経済的利益

非課税   通勤手当150,000円まで(法9-1-5・令20-2)
      社宅家賃のうち、一定の金額(令20-1)

1-3  給与所得者の扶養控除等申告書

毎年最初の給与を受ける日の前日までに「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出してもらう。
ただし、2ヶ所以上から給与をもらう人は、原則主たる給与支払者のみに提出する。(法194-1)

「給与所得者の扶養控除等申告書」の記載内容

  • 給与所得者の住所・氏名・生年月日
  • 控除対象配偶者・扶養親族・障害者等
  • 他の所得者から控除を受ける扶養親族等
  • 従たる給与から控除を受ける扶養親族等

1-4  源泉徴収に際して控除される扶養親族等

(1)扶養親族等の人数は、次の人数の合計数。

  • (老人)控除対象配偶者
  • (老人・特定)扶養親族の合計数
  • 本人が障害者又は特別障害者・寡婦又は特別の寡婦・寡夫・勤労学生のいずれかに該当するごとに1人
  • 控除対象配偶者や扶養親族等が、障害者又は特別障害者・同居特別障害者のいずれかに該当するごとに1人

(2)判定時期 原則  その年12月31日

【例外】 給与の支払を受ける者又はその親族が年の中途において死亡した場合にはその死亡の日

  *年内の給与については、現状の扶養親族等の人数で源泉徴収を行う。

1-5 税額表の種類

(1)税額表の種類と区分
  月額表 月ごとの支払    甲欄・乙欄がある。
  日額表 週・日ごとの支払  甲欄・乙欄・丙欄がある。

(2)どの区分を適用すればいいか
  甲欄  「給与所得者の扶養控除等申告書」の提出があった人、主たる給与
  乙欄  「給与所得者の扶養控除等申告書」の提出がない人、従たる給与
  丙欄  日雇賃金

  甲欄は扶養親族の人数を求め、源泉徴収税額を求める。
  乙欄・丙欄は、扶養親族等の人数を求める必要はなく、直接源泉徴収税額を求める。

(3)税額表に当てはめる給与
  その月の課税給与から、厚生年金・健康保険・雇用保険などの社会保険料を控除した金額

1―6 給与の源泉徴収額の求め方

(例1) 通常の給与
(例2) 半期ごとに役員報酬が支払われる場合
(例3) 一旦給与を支払った後に、追加支給するとき
(例4) 前月分にさかのぼって給与を改定し新旧給与差額を、当月分給与とあわせて支給する場合
(例5) 従たる給与について、扶養控除等申告書の提出があった場合

注)保険料等の額は平成30年3月度東京の額です。正確な額は居住する地域の料率に従ってください

(例1)通常の給与

扶養親族等の数が3人(控除対象配偶者と控除対象扶養親族が2人)。給与の内容は給与明細のとおり。
源泉徴収税額は次のように計算します。
支給額合計(a) 351,583円から非課税給与(b) 12,130円を控除した金額が課税給与(c) 339,453円になります。
この課税給与(c) 339,453円から社会保険料(d) 54,640円を控除した金額が、社会保険料控除後の金額(e) 284,813円になります。源泉徴収税額表から、この金額にあてはまるところを探し、この行と、扶養親族3人の交点が求める税額です。

【給与明細】 【課税標準】
基本給 301,000 基本給 301,000  
役職手当 20,000 役職手当 20,000  
通勤手当 12,130 通勤手当 12,130  
残業手当 18,453 残業手当 18,453  
支払額合計 351,583 支払額合計 351,583 (a)
    非課税給与 12,130 (b) 通勤手当は非課税
    課税給与 339,453 (c)=(a)-(b)
健康保険 17,820 健康保険 17,820  
介護保険 2,826 介護保険 2,826  
厚生年金 32,940 厚生年金 32,940  
雇用保険 1,054 雇用保険 1,054  
    社会保険計 54,640 (d)
    社会保険控除後 284,813 (e)=(c)-(d)
源泉所得税 2,970      
住民税 13,900      
控除額計 71,510      
差額 280,073      
社会保険
控除後の金額
以 上 未 満 0 人 1 人 2 人 3 人 4 人 5 人 6 人 7 人  
278,000 281,000 7,610 5,990 4,370 2,760 1,140 0 0 0 46,600
281,000 284,000 7,710 6,100 4,480 2,860 1,250 0 0 0 47,600
284,000 287,000 7,820 6,210 4,580 2,970 1,360 0 0 0 48,600
287,000 290,000 7,920 6,310 4,700 3,070 1,460 0 0 0 49,500
290,000 293,000 8,040 6,420 4,800 3,190 1,570 0 0 0 50,500

(例2)半期ごとに役員報酬が支払われる場合(従たる給与に該当)

扶養親族等の数が3人(控除対象配偶者と控除対象扶養親族が2人)給与の内容は給与明細のとおり。
数ヶ月分の給与が一時に支給される場合の源泉徴収税額は次のように計算します。

支給額合計(a)1,800,000円から非課税給与(b) 0円を控除した金額が課税給与(c)1,800,000円になります。
この課税給与(c)1,800,000円から社会保険料(d) 0円を控除した金額が、社会保険料控除後の金額(e)1,800,000円になります。この社会保険料控除後の金額(e) 1,800,000円を給与の計算期間の月数(この例の場合 6)で除し、月割額300,000円を求めます。
源泉徴収税額表から、この月割額にあてはまるところを探し、この行と、乙欄との交点の税額を求めます。この交点の税額52,900円に給与の計算期間の月数 6を乗じて計算した金額317,400円が求める税額です。

【給与明細】  【課税標準】  
 役員報酬  1,800,000  役員報酬  1,800,000  
 支払額合計 1,800,000  支払額合計 1,800,000 (a)
     非課税給与 0 (b)
     課税給与 1,800,000 (c)=(a)-(b)
     社会保険計 0 (d)
     社会保険控除後 1,800,000 (e)=(c)-(d)
 源泉所得税  317,400      
 住民税 0      
 控除額計 317,400      
 差額 1,482,600      
社会保険
控除後の金額
以 上 未 満 0 人 1 人 2 人 3 人 4 人 5 人 6 人 7 人  
293,000 296,000 8,140 6,520 4,910 3,290 1,670 0 0 0 51,600
296,000 299,000 8,250 6,640 5,010 3,400 1,790 160 0 0 52,300
299,000 302,000 8,420 6,740 5,130 3,510 1,890 280 0 0 52,900
302,000 305,000 8,670 6,860 5,250 3,630 2,010 400 0 0 53,500
305,000 308,000 8,910 6,980 5,370 3,760 2,130 520 0 0 54,200

(例3)一旦給与を支払った後に、追加支給するとき 

追加支給する金額は40,000円とする。扶養親族等の数が3人(控除対象配偶者と控除対象扶養親族が2人)。
最初に支払った給与の内容は給与明細のとおり。

一旦給与を支払った後に追加で給与を支給する場合、源泉徴収税額は次のように計算します。
最初に支払った給与の社会保険料控除後の金額(e) 272,844円に、追加支給する給与40,000円を加算した金額が312,844円となります。
源泉徴収税額表から、この金額にあてはまるところを探し、この行と扶養親族3人との交点の税額4,000円を求めます。
この税額4,000円から、既に最初の給与から徴収した税額2,540円を差引いた1,460円が、追加支給する給与から徴収する源泉所得税額となります。

(前回給与)     
【給与明細】  【課税標準】  
 基本給  270,000  基本給  270,000  
 役職手当  10,000  役職手当 10,000  
 通勤手当 8,190  通勤手当 8,190  
 残業手当 38,945  残業手当 38,945  
 支払額合計 327,135  支払額合計 327,135 (a)
     非課税給与 8,190 (b) 通勤手当は非課税
     課税給与 318,945 (c)=(a)-(b)
 健康保険 15,840  健康保険 15,840  
 介護保険 0  介護保険 0  
 厚生年金 29,280  厚生年金  29,280  
 雇用保険 981  雇用保険 981  
     社会保険計 46,101 (d)
     社会保険控除後 272,844 (e)=(c)-(d)
 源泉所得税 2,540      
 住民税 3,100      
 控除額計 51,741      
 差額 275,394      
社会保険
控除後の金額
以 上 未 満 0 人 1 人 2 人 3 人 4 人 5 人 6 人 7 人  
305,000 308,000 8,910 6,980 5,370 3,760 2,130 520 0 0 54,200
308,000 311,000 9,160 7,110 5,490 3,880 2,260 640 0 0 54,800
311,000 314,000 9,400 7,230 5,620 4,000 2,380 770 0 0 55,400
314,000 317,000 9,650 7,350 5,740 4,120 2,500 890 0 0 56,100
317,000 320,000 9,890 7,470 5,860 4,250 2,620 1,010 0 0 56,800

(例4)前月分にさかのぼって給与を改定し新旧給与差額を、当月分給与とあわせて支給する場合

扶養親族等の数が3人(控除対象配偶者と控除対象扶養親族が2人)。当月分の給与の内容は給与明細のとおり。
前月分の支給差額が少ない場合には、前月分の支給差額を支給する月の普通給与とみなして、源泉徴収税額は次のように計算します。

前月分の新旧給与差額を含めた支給額合計(a) 437,180円から非課税給与(b) 16,400円を控除した金額が課税給与(c) 420,780円になります。
この課税給与(c) 420,780円から社会保険料(d) 63,351円を控除した金額が、社会保険料控除後の金額(e) 357,429円になります。
源泉徴収税額表から、この金額にあてはまるところを探し、この行と、扶養親族3人の交点の税額5,840円を求めます。
また、前月分の支給差額が相当多額な場合には、その前月分の支給差額を賞与とみなして賞与の源泉税額の求め方により、源泉徴収税額を計算することもできます。

 

【給与明細】  【課税標準】  
当月分基本給 346,000 基本給 346,000  
役職手当 20,000 役職手当 20,000  
通勤手当 16,400 通勤手当 16,400
残業手当 42,780 残業手当 42,780
前月分差額 12,000 前月分差額 12,000
支払額合計 437,180 支払額合計 437,180 (a)
非課税給与 16,400 (b) 通勤手当は非課税
課税給与 420,780 (c)=(a)-(b)
健康保険 21,780 健康保険 21,780
介護保険 0 介護保険 0
厚生年金 40,260 厚生年金  40,260
雇用保険 1,311 雇用保険 1,311
社会保険計 63,351 (d)
社会保険控除後 357,429 (e)=(c)-(d)
源泉所得税    5,840
住民税  5,800
控除額計 74,991
差額 362,189  
社会保険
控除後の金額
以 上 未 満 0 人 1 人 2 人 3 人 4 人 5 人 6 人 7 人  
350,000 353,000 12,590 9,350 7,210 5,600 3,970 2,360 750 0 66,700
353,000 356,000 12,830 9,600 7,330 5,720 4,090 2,480 870 0 67,600
356,000 359,000 13,080 9,840 7,450 5,840 4,220 2,600 990 0 68,500
359,000 362,000 13,320 10,090 7,580 5,960 4,340 2,730 1,110 0 69,400
362,000 365,000 13,570 10,330 7,700 6,090 4,460 2,850 1,240 0 70,400

(例5)従たる給与について、扶養控除等申告書の提出があった場合 

従たる給与から控除する扶養親族等の数が1人(控除対象配偶者)。給与の内容は給与明細のとおり。     
従たる給与について扶養控除等申告書の提出があった場合の源泉徴収税額は次のように計算します。

支給額合計(a) 200,000円から非課税給与(b) 0円を控除した金額が課税給与(c) 200,000円になります。この課税給与(c) 200,000円から社会保険料(d) 0円を控除した金額が、社会保険料控除後の金額(e) 200,000円になります。
源泉徴収税額表から、この金額にあてはまるところを探し、この行と、乙欄の交点の税額20,900円を求めます。この求めた税額20,900円から、乙欄から控除する扶養親族等1人つき、1,610円を控除した残額19,290円が控除すべき源泉徴収税額になります。  

【給与明細】  【課税標準】  
役員報酬 200,000 基本給 200,000
支払額合計 200,000 支払額合計 200,000 (a)
非課税給与 0 (b)
課税給与 0 (c)=(a)-(b)
健康保険 0 健康保険 0
介護保険 0 介護保険 0
厚生年金 0 厚生年金  0
雇用保険 0 雇用保険 0
社会保険計 0 (d)
社会保険控除後 200,000 (e)=(c)-(d)
源泉所得税 19,290
住民税 0
控除額計 19,290
差額 180,710  
社会保険
控除後の金額
以 上 未 満 0 人 1 人 2 人 3 人 4 人 5 人 6 人 7 人  
195,000 197,000 4,630 3,000 1,390 0 0 0 0 0 19,500
197,000 199,000 4,700 3,070 1,460 0 0 0 0 0 20,200
199,000 201,000 4,770 3,140 1,530 0 0 0 0 0 20,900
201,000 203,000 4,840 3,220 1,600 0 0 0 0 0 21,500
203,000 205,000 4,910 3,290 1,670 0 0 0 0 0 22,200

1-7 賞与の源泉徴収額の求め方

  • 賞与の源泉税は、(1)前月の給与から税率を求め、(2)賞与にその税率を乗じて計算します。

賞与の支給日の「前月の社会保険料控除後の給与の金額」が359,439円で、扶養親族等の数が2人(控除対象配偶者と控除対象扶養親族が1人)の場合、扶養親族2人の欄を下に見ていくと、369,000円未満のところに359,439円が、該当します。この行の左を見ると、税率 6.126%が求められます。
「社会保険料控除後の賞与の金額」が765,439円の場合、765,439円に6.126%を乗じた46,890円が源泉所得税額になります。

  • ただし、社会保険料控除後の賞与の金額が、賞与支給日の前月の社会保険料控除後の給与の金額の10倍を越えるときは、給与の月額表から源泉税額を求めることになりますので、注意してください。

(単位:千円)

甲欄 乙欄
賞与に乗ずべき率  0 人 1 人 2 人 3 人 4 人 5 人 6 人 7 人  
0% <--未満 79 243 133 295 300 300 333 372
2.042% <--未満 79 243 269 295 300 300 333 372
4.084% <--未満 252 282 312 345 378 406 431 456
6.126% <--未満 300 338 369 398 424 450 476 502
8.168% <--未満 334 365 393 417 444 472 499 527
10.21% <--未満 363 394 420 445 470 496 525 553 239千円未満
12.252% <--未満 395 422 450 477 504 531 559 588
14.294% <--未満 426 455 484 513 543 574 602 627
16.336% <--未満 550 550 550 557 591 618 645 671
18.378% <--未満 647 663 678 693 708 723 739 754
20.42% <--未満 699 720 741 762 783 804 825 848 296千円未満
22.462% <--未満 730 752 774 796 818 841 865 890
24.504% <--未満 764 787 810 833 859 885 911 937
26.546% <--未満 804 826 852 879 906 934 961 988
28.588% <--未満 857 885 914 942 970 998 1,026 1,054
30.63% <--未満 926 956 987 1,017 1,048 1,078 1,108 1,139 528千円未満
32.672% <--未満 1,321 1,346 1,370 1,394 1,419 1,443 1,468 1,492
35.735% <--未満 1,532 1,560 1,589 1,617 1,645 1,674 1,702 1,730
38.798% <--未満 2,661 2,685 2,708 2,732 2,756 2,780 2,803 2,827 1135千円未満
41.861% <--未満 3,548 3,580 3,611 3,643 3,675 3,706 3,738 3,770
45.945% <--以上 3,548 3,580 3,611 3,643 3,675 3,706 3,738 3,770 1,135千円以上

1-8 年末調整

・給与所得者のその年分の所得税を精算する手続き
  年末調整を行う人     年末に勤務している人
  年末調整を行わない人  ・給与収入が2,000万円を超える人
              ・2ヶ所以上から給与をもらっている人
              ・年の中途で退職した人

・年末調整の時期   

  原則  その年最後の給与を支払うとき
  例外  年の中途において、死亡退職・非居住者となったときはそのなった時

 

1-9 源泉所得税の納付

原則  支払った月の翌月10日
納特  1月から6月中に支払った給与  7月10日
    7月から12月中に支払った給与  翌年1月20日